NEWSお知らせ・トピックス

『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』は“情報なし”で楽しんで|窪田正孝、石橋静河、シェルカウイにインタビュー

2023.5.9


 

「THEATER MILANO-Za」のこけら落としとして上演される『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』。これまで多くの人々を魅了し続けてきた『エヴァンゲリオン』が舞台版でどんな世界を拓くのか。オリジナルストーリーとなる本作にて原案・構成・演出・振付を担うシディ・ラルビ・シェルカウイさんと、主人公・渡守ソウシを演じる窪田正孝さん、霧生イオリ役・石橋静河さんに、『エヴァンゲリオン』という作品に対する想いや舞台の楽しみ方について聞いた。

― シェルカウイさんが継続的に日本で創作をなさるのはなぜでしょう?

<シェルカウイ>
幼少時に日本発の漫画やアニメーションといった要素に囲まれ、それらに助けられてきたというのは大きな理由のひとつです。僕は何かの文化に自分が属していると感じたことがないのですが、人生の岐路に立たされたときに、ヒントをくれるのはいつも日本の漫画やアニメでした。そんな経緯もあり、子どものときから「いつか日本に行ってみたい」と常に思っていたんです。

初めて日本に訪れたのは1999年でしたが、それはもう強烈な体験でした。当時はスマートフォンも普及しておらず、よく道にも迷ってしまって(笑)。でも、自分がどこにいるのかわからない不確かな状況に置かれることで内面が研ぎ澄まされていく感覚もあり、路地に入り込んで道に迷う状況を面白いとも感じていました。

日本で初めて舞台作品をクリエイションする機会を得たのは2012年に上演された『テヅカTeZukA』です。2011年3月11日にも僕は東京にいたのですが、あの日、日本のいろいろなことが崩れていく状況を目の当たりにし、大きな衝撃を受けました。ですが同時に、大変な事態の中から生まれる人々の繋がりや新たに物事が構築されていく力強い様子に大きな希望も感じました。あのときに肌で得たさまざまな想いが、僕を日本での創作に向かわせる原動力のひとつです。

― 多くの人が注目している本作『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』について、それぞれの捉え方を教えてください。

<窪田>
映像の『エヴァンゲリオン』には、神話性を感じさせる描写がある一方、ハードな戦闘シーンなどもありましたが、『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』では『エヴァンゲリオン』が紡いだレガシーを大切にしながら、ラルビ(=シェルカウイさん)がまったく新しい世界を創造しようとしていて、自分もその挑戦に参加できることを幸せに感じています。

今回、この舞台に挑む中で、今の社会でさまざまな事態の停滞や世代間のバトンタッチが上手くいっていない状況、大人たちが自分たちの欲望に走って、子どもたちの未来をきっちり見すえていない事態をあらためて実感するようになりました。舞台版では機能不全に陥った社会の姿も描かれていますので注目していただきたいですし、すぐに情報を得られる今だからこそ、劇場では自身の感覚と向き合いながら作品に触れていただければと思います。おそらく、左脳でなく右脳で舞台上に広がる世界を体感してもらうと、この作品で描かれるメッセージがより鮮明に伝わるはずです。

<石橋>
ラルビとの創作はとてもエキサイティングで、自分の中にある表現のパターンのようなものを打破しようと挑みながら日々稽古場に通っています。

『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』には現代における色々な問題も織り込まれていて、今、私たちが暮らしている社会とリンクする点がとても多いと感じます。子どもたちが置かれている状況もそうですし、男性社会の中で女性がその構図を変えようともがきながら動くさまも重なります。舞台でしか表現できないさまざまなことを受け取っていただければ幸いです。

<シェルカウイ>
すべてを“開いた”状態で作品と対峙してもらえたら嬉しいです。映像の『エヴァンゲリオン』が紡いできた世界観を大切にしながら、僕たちはまったく新しいものを創り出そうとしていますから。今回の舞台版はオリジナルのストーリーですが、映像版と魂の部分でリンクする作品になると信じています。ぜひその瞬間を体感してください。


 

―  新劇場「THEATER MILANO-Za」で最初に舞台に立つカンパニーの一員として今のお気持ちをお願いします。

<石橋>
すでに歴史がある劇場だと、中に入ったときにそれぞれのカラーというか個性を感じ取ることもありますが、今回は新劇場のオープニング。私たちのカンパニーが最初の“色”をつけると思うと武者震いのような高揚感もあり、ドキドキしています。

<窪田>
本当にドキドキするよね。思っていたより舞台と客席の距離も近かったし。劇場のこけら落としの舞台に立たせてもらうのは一生に何度も経験できない光栄なこと。でも、こけら落としという“枠”にとらわれることなく、カンパニーの一員としてラルビとの創作を突き詰めていきたいです。

<シェルカウイ>
新劇場のオープンと僕たちの『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』の開幕を一緒に迎えられるなんて、まるでクリスマスと誕生日が同時に訪れるようなワクワク感があります。お客さまにふたつのスペシャルなプレゼントをお渡しできるよう作品を練り上げていきます。


▼MASH UP! KABUKICHO にてその他のエピソードも公開中!
不自由な“枠”にとらわれない。窪田正孝、石橋静河、シェルカウイが語る『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』

THEATER MILANO-Zaこけら落とし公演
COCOON PRODUCTION 2023
『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』

2023年5月6日(土)~5月28日(日)
お問合せ:Bunkamura 03-3477-3244(10:00~18:00)

公演詳細はこちら


文:上村由紀子(演劇ライター)
写真:平安名栄一

 

chevron_left 前に戻る