「THEATER MILANO-Za」オープニングシリーズ第3弾として7月より『少女都市からの呼び声』が上演される。劇作家・唐十郎氏が紡いだリリカルな世界が新宿でアンダーグラウンド演劇を発信し続けてきた金守珍氏（新宿梁山泊）の演出・新劇場の舞台にて新たな命がどう吹き込まれるのか。本作がストレートプレイ（会話劇）初出演となる咲妃みゆさんに、共演の安田章大さん（関ジャニ∞）と映る作品ビジュアル撮影時のエピソードや自身が担う“雪子”役への思い、新たな挑戦への意気込みなどを語ってもらった。

― 咲妃さんは、宝塚歌劇団退団直後からストレートプレイへのご出演を願われていたそうですね。
＜咲妃＞
宝塚歌劇団を卒業し、人生の新たなスタートを切るにあたり、ストレートプレイの舞台に挑戦したいという思いがずっと胸の中にありました。でも当時、もしミュージカルや音楽劇ではなく、すぐにセリフ劇の舞台に立っていたら、大きな戸惑いでつまずいてしまったかもしれません。卒業後の６年間、自分なりにさまざまな試行錯誤を重ね、やっと舞台で自然に呼吸し、その場に居られるようになった実感もあります。そんな中で今回のお話をいただき、満を持してではないですが、新たな挑戦ができることをとても幸運だと感じています。

― 作品ビジュアルもとても印象的です。

＜咲妃＞
スタジオの空気にこれまでとは違った緊張もありましたし、素顔に近いメイクでの撮影もあまり経験がないのでドキドキしました。この作品で安田（章大）さんが担われる田口と私が演じる雪子は表裏一体のような関係ですので、ふたりの髪型もそれを想起できるようスタッフさんが現場で作ってくださったのを覚えています。

― 今回の『少女都市からの呼び声』はストレートプレイの中でも“アンダーグラウンド演劇”と呼ばれる作品ですが、現時点でどう捉えていらっしゃいますか？
＜咲妃＞
これから未知の、そして大変な世界に入っていくのだと武者震いしています（笑）。歌劇団時代から応援してくださる方からはよく「いつも驚かされます」「咲妃さんのファンでなければ知ることがなかった世界を見ることができました」とお手紙をいただくのですが、それが私の大きなモチベーションになっていますし、自分が舞台に立つ仕事を続ける中での支えのひとつです。ミュージカルに比べ、ストレートプレイは等身大の人間が宿す生々しさを言葉だけで表現するのが魅力のひとつですが、音楽に頼れない分、自分の中にある引き出しの数が如実に現れてしまう怖さもあります。それに加え、初ジャンルへのチャレンジですから、まだドキドキしているのも事実です。ですが私、今回の作品に参加するにあたり、決めていることがあるんです。

― それはどんなことでしょうか。ぜひ教えてください。
＜咲妃＞
これまで新しい役を演じさせていただくときは、出来る限り作品のことを調べ、徹底的にその役と対峙してきました。ですが今回はあえてその“徹底的”をやめようと思っています。ひとつの役に対して自分の100%の力を使って追及するのも役作りのひとつの方法ですが、完ぺきを追い求め過ぎると「～ねばならない」「～であるべき」という思いが増幅し、がんじがらめになって、いろいろなところに隠れているヒントを拾えなくなってしまいますから。今回は、新しい分野の作品や役をやらせていただくということもあり、あえて事前に深く勉強しすぎず作りこまず、まっさらな状態でお稽古に参加するつもりです。これは私にとって逆に大きな挑戦で、わからないことや自分の中に落とし込みたいことが出てきたときは、お稽古場で演出の金（守珍）さんはじめ共演者の皆さんに伺いながら、雪子という役を作り上げていくつもりです。

― 新たなジャンルへの挑戦と、咲妃さん自身の作品や役との向き合い方、本作の雪子役はふたつの挑戦になるのですね。
＜咲妃＞
その通りです。もちろん、台本を読んでお稽古場に入りますが、これまでとは違うアプローチになると思いますし、そうしていくつもりです。唐十郎さんが紡がれた詩的な言葉を金さんがどう具現化し、私たちがどう体現するのか現実と夢の世界が交錯する物語を楽しんでいただければ嬉しいです。

― 新劇場「THEATER MILANO-Za」はもう体験なさいましたか？
＜咲妃＞
先日、こけら落とし公演の『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』を劇場で観劇しました。舞台と客席の距離が本当に近くて、臨場感が凄かったですし、さまざまな舞台機構がフル活用されており、この劇場でなら今後もいろいろな舞台が多様なスタイルで上演できると大きな可能性も感じました。私はまだ客席から拝見しただけですが、ここで新しい『少女都市からの呼び声』がどんなふうに生まれるのかとても楽しみですし、新劇場のオープニングシリーズの舞台に立たせていただくのは初めての経験ですので、カンパニーの一員としてとても光栄です。

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アングラ演劇の聖地・新宿で、“まっさら”な咲妃みゆが挑む。舞台『少女都市からの呼び声』

文：上村由紀子（演劇ライター）
写真：浦将志