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劇場の中のひと|
THEATER MILANO-Za 案内係 磯田勝彦、和﨑瀬奈インタビュー
2023.12.25
2023年4月に開業したばかりのホテル×エンタメの複合施設<東急歌舞伎町タワー>。
その6~8階に位置するライブエンタメシアター<THEATER MILANO-Za>のお客さま案内業務を取り仕切るのが、株式会社キョードーファクトリーの磯田勝彦さんと和﨑瀬奈さんのコンビだ。歌舞伎町という立地、複合施設内の新劇場と向き合い、どのようにゼロから案内業務を立ち上げたのか。お二人の話を聞いた。
左から和﨑瀬奈さん、磯田勝彦さん
―まず、お二人の経歴、案内業務を選んだ経緯などを教えてください。
<磯田>
元々の経歴とすると、たまたま先輩に「アルバイトしない?」って誘われた仕事が野球場の仕事だったんですよ。そこで3年後ぐらいに、コンサートライブの仕事をやってくれっていうことで。21歳ぐらいから今年の3月までその会社にいました。
ライブの仕事と、劇場の仕事って同じようなエンタメ業界なんですけど、全然違うなと思っていて。せっかくライブの仕事をここまでやり続けたんであれば、“もうひとつのエンタメ”と自分で勝手に思っているものに挑戦したいなと。それで今の会社キョードーファクトリーに応募して、THEATER MILANO-Zaに来たって感じですね。
<和﨑>
私は元々、舞台が好きだったっていうのもあって、自分が好きな仕事したいなって。学校を卒業した4月からアルバイトで劇場のレセプショニスト(劇場案内係)になりました。面白そうな演目が続いているなと思って、かっこいい劇場だなと憧れだけで入った感じ(笑)。その後、カフェや販売で働いたりもしたんですけど、やっぱりイベントごとが好きで。観に行くのも運営業務も好きだったので、キョードーファクトリーにアルバイトを経て入社しました。
東急歌舞伎町タワー開業セレモニーにて。THEATER MILANO-Zaを代表してテープカットを行う和﨑さん(右から二人目)。
裏方の業務ではない。お客さまから“見られる”しごと。
―劇場の案内業務とは、どのような事をするのでしょうか?
<和﨑>
流れで言うと、チケット確認やお客さまの入場誘導、座席案内などがメインの仕事ですが、この劇場の場合は、お身体の不自由なお客さまや、車いすをご利用のお客さまのアテンドも重要です。タワーの構造上、1階までお迎えにあがる必要があるので。あとは有事の際の避難誘導も絶対に欠かすことはできません。
<磯田>
私はずっとライブの業界だったので劇場を今まで経験していなかったのですが、改めて思ったのは、エンタメ業界にはオモテ、ウラの概念がありますよね。
以前は、演者を中心にオモテ側、ステージを作る人とかは裏方・ウラ側で、案内業務をしている人たちも実はウラだと思っていたんですよ。でも実は劇場での案内業務ってオモテの立場なのかなと。お客さまからすると、この演者のこういうところが好きだった悪かったってあると思うんですけど、劇場にいると、この案内業務が良かった悪かったって判断されるんですよ。だからこっちは気を抜けないって感じましたね。笑顔、挨拶、立ち振る舞い、言葉遣いにしても、大きくイメージが変わりました。ここにきて、劇場での案内業務というのは、出演者同様にオモテ側の仕事なんだなって感じています。
開場数分前のロビー。各担当が持ち場にスタンバイしている。
―THEATER MILANO-Zaの特徴はどんなところでしょう?
<和﨑>
私もお客さまとして観劇したことがあるんですが、ここは一体感というか、一つの空間としてまとまっていて、距離が近いというのもあり、すごく身近でナマモノを受け止められるみたいな、感動を受けやすい空間だなとは思っています。
案内目線としては、エスカレーターを降りてすぐに劇場というお客さま動線は難しいところですね。
タワーの2階・3階でお客さまのご移動を調整しながら上階の安全を確保しているので、そういうのが他の劇場だとないかなと思います。劇場内の安全だけじゃなく、建物の入退場の安全を考えるのは初めてだったので、苦戦した点ではあるかなと思います。
すべての不安を取りのぞいて迎えた、初日。
開場1時間15分前。レセプショニストたちを集めて最終チェック。
―開業に向けてのトレーニングはどのように行ったのですか?どのぐらいの期間?
<和﨑>
結構やったんですよ、30時間ぐらい。3月中旬から4月の開業に向けて。
<磯田>
基本的に17名のメンバーを入口、1階、2階、3階と4分割しているんです。そこに1人ずつチーフがいて、そこの上に社員がいるという指示系統で、全員がトランシーバーで常時つながっています。
<和﨑>
基本的には実践型のトレーニングでした。片耳にトランシーバーをつけたままでもお客さまの話を聞けるよう練習したり、暗い客席内を体感してもらったり。客席内での案内用ペンライトの使い方、車いすをご利用のお客さまのご案内、目線の合わせ方、クッション言葉の使い方とか。読み合わせとかもやったんですけど、みんなで何か実際にやってみよう、声出してみようっていう時間が一番多かったです。
<磯田>
あと、劇場では非日常言葉が多いんですよね、「お化粧室」だったり、いわゆる普段使っている敬語とも違って。そこに関しては講師の方に来て頂いて、言葉遣いを正常に戻してくださったのは、トレーニングとしては難しかったですが、重要だったと思います。
案内業務の経験者も2~3人しかいなかったので、トレーニングとしては比較的時間をかけて準備したんですけど、最初の1ヶ月、エヴァンゲリオンの時はやっぱり大変でしたよね。
▼2023/5/6(土)~5/28(日)『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』
インタビュー中の和﨑さん。
―新しい劇場の案内業務を「あなたたち二人が回すんだよ」というのは、かなりのプレッシャーかと思いますが、どう向き合って初日を迎えたのでしょうか?
<和﨑>
意外と私はポジティブで。研修やってみて、「あ、いける」って自信があって。こんだけ練習してきたし、事前に「この配置で明日やります、この動きになります」ってみんなで確認したから、失敗することはないだろうと思っていました。だから初日は不安はなかったというか、これだけ研修やったし、レセプショニストを信頼していたので、トラブルがあったとしても大きな失敗はないだろうと。
<磯田>
僕が初日に意識していたのは、今までって3万人ぐらいのライブを中心にやってきたんで、お客さま1人ずつを見ることがなかったんですよ。ブロックごとにしか見ないからお客さまの印象がなくて。なので初日は必ず900人全員を見てみようかなって思って迎えました。その習慣は今でも変えてなくて。客席に入って、どんなお客さまがいるのかなって見るように心がけていますね。ただもう初日の事はあんまり覚えてなくて、あっという間に終わった記憶しかないですね。
―そして開業から7か月ほど過ぎました。これまでの失敗談などはありますか?
<和﨑>
…うーん。
<磯田>
失敗談はありますよ、方言が通じないとこですね(一同爆笑)。
最初は通じない言葉が仲間うちでもお客さまに対してもあって。お客さまから指摘されたこともありました。
それと、声の大きさですね。ライブのときって何万人相手にするんで、声の大きさが結構重要で。でも劇場になると、あまりに大きい声出すと、本当に耳をふさぐお客さまもいらっしゃって。最初の2ヶ月ぐらいは毎日言われていましたね、「もうちょっと劇場に合わせた声にした方がいいと思います」って。いやでも確かにそうだなって、レセプショニストの声を聞いても、そうだなって思います。
―和﨑さんは失敗談ナシでよかったですよね?
<和﨑>
いや、ありましたありました!(笑) その、新しい劇場というのもあって予想外の事が起きるというか。初日にまさかの劇場入口で詰まって、開演がだいぶ遅れてしまった公演があって。エスカレーターもひどい状況になって、タワー内の下の階のテナントの営業にもご迷惑をかけてしまいました。あれはちょっと準備不足というか、予想外のことではあったんですけど。先の先を読んで、万が一にはこうなっちゃう…、みたいなのをどんどん考えて経験積んでいかないとですね。
お客さまと一緒に、「楽しい空間」を作り上げる。
―お客さまと接するにあたって、大切にしている事ってありますか?
<磯田>
…何か、前職よりも「ありがとう」って言われる回数が増えた気がするんです。
今までは、これほどお客さまに親切にしてこなかったのかなって(笑)。この20何年間で「ありがとう」って言われた事そうそうないなと。見ている限りでも、レセプショニストにありがとうって言ってくださっているお客様が多くて。最初にトレーニングにした言葉の使い方だったりとか、そういうところが今いいふうに出ているんだと思います。
<和﨑>
これはもう全レセプショニストに言っているんですけど、困っている人がいたら絶対声かけてねって。最近だと、新人の子と一緒に車いすをご利用のお客さまの案内をする機会があったんですよ。1階でのお迎えから客席へっていう単純な流れではあるんですけど、お客さまとせっかく一対一で接する機会なんだから、雑談でもして楽しい空間を、と伝えました。実際にお客さまとレセプショニストが笑顔でしゃべりあってて。業務を教えるってだけではなく、お客さまに楽しい空間をっていうのは私の想いではあります。
開場直後のロビーを見守る磯田さん。
―最後の質問です。この仕事をして良かったなとか、嬉しいと感じることがあったら教えて頂けますでしょうか?
<磯田>
やっぱりアレですよね。この仕事は辞められないと思ったのは、ご来場のお客さまが楽しそうにしていらっしゃるから。こっちもポジティブになりますよね。
あとは単純に新宿で働けてよかったかなと(笑)。地元じゃありえないような新宿の街に出退勤して、そこでポジティブな仕事ができているのは良かったなって本当に思いますね。
―では和﨑さん、最後にシメて頂いてよろしいでしょうか?
<和﨑>
私は、千秋楽のカーテンコールは絶対しっかり見るようにしているんです。この仕事やっててよかったな、無事終わったな、幕おりたなって。これは色あせることなく慣れることなく、千秋楽のカーテンコールではその感情が毎回あります。安心感と感動。責任を終えたみたいな、1回区切りついたみたいな感動がありますね。
ご鑑賞中のお客さまを見ていても、楽しんでいる顔だったり感動して泣いているのを見ると、すごくやりがいと言うか、この空間を作り上げている一員になれているから、自分でも良かったなとか思ったりします。
―磯田さん、和﨑さん、本日はありがとうございました!
<磯田・和﨑>
ありがとうございました!
劇場内ロビー。郷ひろみさんのお写真前にて。
▼2024/12/8(金)~17(日) HIROMI GO SPECIAL SHOW 2023 THEATER HIROMI-Za “Majestic Voyage”
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