NEWSお知らせ・トピックス

LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」2024|脚本・演出 山崎 彬インタビュー

2024.9.13

LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」2024 の稽古が佳境を迎えている。2024年バージョンは、2023年に公演がおこなわれた初演の再演と続編。再演は「PARTⅠ STARRY」、続編は「PARTⅡ 秀華祭」と銘打たれ、公演期間の終盤には、PARTⅠとPARTⅡが同日に上演されるスケジュールも組まれている。

このたび、初演から引き続き脚本・演出を務める山崎 彬(悪い芝居)にインタビューを実施。本作への思い入れや脚本・演出へのこだわりから、“ぼっち~ず”の誕生秘話、本作に携わってよかったと感じていることなどについて語ってもらった。

山崎 彬
劇団「悪い芝居」所属。
「愛しのボカン大作戦」旗手。舞台『リコリス・リコイル』、『「HUNTER×HUNTER」THE STAGE』など、注目の2.5次元舞台を数多く手がける。

― 本作は“LIVE STAGE”の名のとおり、役者たちが生演奏でライブをおこなう舞台です。本気の演奏とお芝居を両立させるのは大変難しいと思うのですが、演奏シーンでの演出について教えていただけますか?
演奏そのものは音楽監督にお任せして、僕はそこに演劇的な表現を加えていっています。「演奏をお芝居にしていく」演出ですね。昨年の公演は「まず1曲ちゃんと仕上げよう」「ここのフレーズをしっかり弾けるように」と、演奏での課題をクリアしながらの作業でした。でも今回は、すでにその問題は解決しているところからのスタートなので、より良い表現を作り上げるための環境が整っています。

稽古をしていて感じるのは、舞台版・結束バンドのメンバーの関係性がより深まっていることです。以前よりもさらに“バンド”になっていますね。技術面での向上も重要ですが、そういう目に見えないものは大きな力になります。

まもちゃん(守乃まも/後藤ひとり役)はライブをしたり、他の3人もそれぞれのフィールドで経験を積んできています。この4人がまた集まってあの公演と続編の公演でライブをおこなう。この先の稽古と本番が、僕もとても楽しみです。続編は新しいものを。再演は、再演だけれども新鮮に。昨年のことはいい意味で忘れて、まっさらな気持ちで作っていきたいですね。


左より:守乃まも(後藤ひとり役)、大森未来衣(喜多郁代役)、大竹美希(伊地知虹夏役)、小山内花凜(山田リョウ役)


― 今回は、続編とともに2023年公演の再演も上演されます。再演は、初演から脚本・演出の面で変えているところはありますか?
「あの公演をもう1度しっかりとやりたい」と思っているので、大幅な脚本の加筆修正はしていませんが、2024年版として書き加えられるべくして書き加えた箇所はいくつかあります。また、1年経ってあらためて作品を見てみると、演出面で「もう少し詰められたな」と思う部分はあります。そういう所には手を入れているので、全体的に大きな変化はないけれども、作品としてのクオリティは上がっているはずです。

ぼっち~ずを筆頭に、役者さんたちも十分に準備してきてくれています。特に驚いたのは、廣井きくり役の月川 玲さんです。彼女はベーシストが本業で、本作の初演が初舞台だったのですが、昨年を踏まえてキャラクターへの理解もさらに深まったからか、お芝居がすごくよくなっていました。皆がこの公演に向けて高めてきたものを持ち寄っているので、ライブシーンはもちろん、演劇としても確実に面白くなっていると思います。


月川 玲(廣井きくり役)

― 本作を含め、山崎さんが原作のある2.5次元舞台の脚本を書く上で大事にしていることは何でしょうか。
原作の1番のファンになることです。原作者の先生がその作品で伝えたいことや、原作ファンの皆さんの思い、舞台を観てくださるお客さまの気持ちを大事にしたい。そのためには、作品を大好きになって、自分自身が観たいと思う、おもしろいと感じるものを作らせていただこう、と。

本作においては原作の皆様も舞台としての作り方を自由に任せてくださっています。せっかく舞台にするのであれば、そのご期待にこたえつつ「舞台ならでは」の魅力を絶対に入れたい。アニメ的な表現をあえて舞台上でアナログ的手法でみせるなど、原作そのままでありながら、舞台だからこそダイレクトに伝わる魅力は逃さず詰め込んで作り上げたいです。

同時に、生の舞台でやるには難しかったり、上演時間の都合でピックアップする箇所を絞らなければいけなかったりします。観客として見た時に違和感のない舞台版の脚本をつくるために、舞台版の世界線を生きる登場人物の心情や行動に、ちゃんと一本の筋を通すことは一番大切にしています。

― 演出でのこだわりについても教えてください。特に本作では、ぼっち~ずの登場や、手持ちカメラを使ったライブ感のあるシーン作り、階段の高低差を利用した場面転換が印象的でした。
そうですね、ライブ感とともに、舞台上での“絵”的な意味で、視覚はとても大事にしています。手持ちカメラでのライブ映像演出や、高低差を使って流れるようにシーンを作っていくのが好きで、自分の劇団(悪い芝居)や、他の舞台でも培ってきたことでもあります。

ここ数年、漫画やアニメなどを原作とした舞台の演出を多くお任せいただいていますが、「アニメや漫画を舞台にしている」という感覚では作っていないんです。小劇場でもオリジナルの作品でもどんな作品であっても、人間としてのやりとりを丁寧に表現したい。舞台化する上で名場面をただ再現したら完了するのではなく、名場面を初めて見た時の感動こそが再現すべきものだと考えています。そのために名場面をどう描くかはもちろん、名場面に向けて、どのように演出プランを積み上げてゆくかを大切にしています。

ぼっち~ずは、「後藤ひとりを演劇にするなら?」と考えた時に、必然的に生まれてきた存在です。多くの作品では、主人公がたくさんの人と出会って試練を乗り越えて、世界をどんどん広げて成長していきます。でも、「ぼっち・ざ・ろっく!」の主人公・後藤ひとりは、多くのシーンをひとりだけの世界で進めてゆくので、これをどう演出しよう? といろいろと考えている中で「あ、増やしちゃえばいいのか」と思いました。


後藤ひとり(演:守乃まも、前列左)と、後藤ひとりが生み出したイマジナリーフレンド・ぼっち~ず

ぼっちちゃんに限らず、誰でも1人でいる時はずっと誰かと会話していると思うんです。パーソナルな空間で生み出されるイマジナリーフレンド。彼女の場合はその存在が特に多いし、舞台の上でも「ぼっちちゃんが特に1人で考え込んでいるときにはぼっち~ずを多く出す」というルールを決めました。だから、結束バンドのメンバーとの関係が深まっていって、1人ぼっちの世界に入り込んでいないときには、ぼっち~ずは出てきていません。

― ぼっち~ずの存在が、ぼっちちゃんの心理を表すバロメーターになっているんですね。最後に、本作 LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」の脚本・演出をしていてよかった、楽しかった、と感じたことは何でしょうか。
作品自体が楽しかった…というのはもちろん、舞台版・結束バンドのあの4人が「演劇っておもしろい」と感じるようになっていってくれたのが、うれしかったですね。僕は、観る人にも演じる人にも、演劇は面白いんだということを伝えていきたいんです。

「表現する」というのは、なかなかにしんどい行為です。だからこそ、演劇の楽しさを信じて常にユーモアをもって創作することが大事だと僕は思っていて。あの4人だけでなくこの座組の全員が「稽古が楽しい」「この作品を作るのが楽しい」と思ってくれる人たちだった、というのが1番ありがたかったですね。

それから、お客さまが他の作品とはまた少し違った反応をして下さったのもうれしかったです。「お前ら絶対観に行けよ!」なんて周りに強くすすめてくださったりね(笑)。原作の持つ魅力なんでしょうね、ファン層が広くて、さまざまな方々が観に来てくださったのも印象深いです。そういう方々が本作を観て「演劇っておもしろいんだな」と感じて、他の舞台を観に行ってくださるようになったら…。本作はそのきっかけとなれるような作品になると僕は信じていますし、そう感じていただけたらとてもうれしいことですね。

LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」2024
PARTⅠ STARRY / PARTⅡ 秀華祭

2024年9月7日(土)~2024年9月23日(月・祝)
お問合せ:アニプレックスカスタマーセンター03-5211-7555(平日 10:00 18:00/土・日・祝日除く)

公演詳細はこちら

文:広瀬 有希 

chevron_left 前に戻る