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笑いあり涙あり!人間の美しさと愚かさを真正面から描く、舞台『泣くロミオと怒るジュリエット2025』開幕

2025.7.8

 

連日猛暑が続く中、暑い夏をさらに熱くする舞台『泣くロミオといかるジュリエット2025』が、東京・THEATER MILANO-Zaで7月6日(日)に初日を迎えた。

これまでに世界中でありとあらゆる翻案作品が誕生してきた、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』。誰もが知る古典的名作を、オールメール(全役男性キャスト)かつ全編関西弁という大胆な翻案・演出で生まれ変わらせたのが『泣くロミオと怒るジュリエット』だ。2020年の初演で好評を博したが、当時は残念ながらコロナ禍の影響で一部公演が中止となってしまった。5年が経った今回は、そのリベンジの想いも込められた待望の再演となる。

主演は桐山照史がロミオを、柄本時生がジュリエットを、それぞれ前回公演から続投。さらに浅香航大、泉澤祐希、和田正人、中山祐一朗、朴勝哲、高橋努、市川しんぺー、八嶋智人、渡辺いっけいら、新旧キャストが入り混じり、2025年版の新たな『泣くロミオと怒るジュリエット』が誕生する。

以下、初日の前日に行われたゲネプロのレポートをメインに、囲み取材の模様や劇場で販売されているオリジナルドリンクを紹介していく。

 

 笑いが絶えない囲み取材 

(左から)鄭義信、渡辺いっけい、桐山照史、柄本時生、八嶋智人

ゲネプロの前に行われた囲み取材には、桐山照史、柄本時生、八嶋智人、渡辺いっけい、鄭義信(作・演出)ら5名が登壇。フォトセッション時から八嶋が小声で延々と話し続け、それに対して桐山がツッコミ続けるなど、終始笑いが絶えない賑やかな囲み取材となった。

 

 ここでしか観ることができない、唯一無二のロミジュリ 

関西弁によるボケとツッコミの応酬に大いに笑わされながら、美しい純愛に胸が締め付けられ、人間の愚かさをまざまざと見せつけられる・・・・・・まるでジェットコースターのような3時間半だった。

工場の煙と煤に覆われた灰色の港町、ヴェローナ。聞こえるのは波の音とカモメの鳴き声だけ。そこに大荷物を抱えた田舎娘が現れ、客席に向かってぶっきらぼうに話しかける。「あたし、ジュリエットです。なんか文句ある?」。負けん気の強い彼女は、これまで散々男に泣かされてきた過去を捨て、人生をやり直すためにヴェローナへやってきたという。

唐突なジュリエットの登場に呆気にとられていると、彼女のかつての乳母であり、兄ティボルトの内縁の妻でもあるソフィアが登場。有無を言わせず爆速爆音トークを繰り広げる。ツッコミどころしかないソフィアの思い出話に、冷静に的確にツッコむジュリエット。まるで漫才のような2人の掛け合いにみるみる引き込まれてしまう。

 

ジュリエットとソフィアは、本作において唯一の女性の役だ。いずれも登場時に多少の衝撃は受けるものの、物語を追っていくにつれて性別のことは不思議と全く気にならなくなる。むしろ、たまに漏れる低い声や荒々しい動きが、キャラクターの個性を豊かにしている気さえする。ジュリエットに扮する柄本は機敏な動きで舞台上を駆け回り、喜怒哀楽を全身で表現。緩急ある芝居で、ロミオのみならず観客をも魅了する。ソフィアを演じる八嶋は、近所の子どもたちから“おばちゃん”と呼ばれることがあると囲み取材で明かしていたが、舞台上でも見事な肝っ玉母さんっぷりを発揮。その一方で、ティボルトを健気に愛し続ける姿には切なさが漂う。

 

深夜の街では雄々しい叫び声が響き渡り、愚連隊モンタギューと愚連隊キャピレットの抗争が始まる。モンタギューのマキューシオとキャピレットのティボルトが一触即発となったそのとき、警部補のカラス(市川)と巡査のスズメ(中山)が仲裁に入った。「あれが、あれやから、あれで、あれやろ」と何でも「あれ」で済まそうとするカラスと、淡々と盛大にボケるスズメの名コンビを見ていると、ここは吉本新喜劇なのだろうかと錯覚してしまいそうだ。冒頭からほんの10分で、鄭義信による関西ワールドに劇場中が包みこまれていた。

 

ボケとツッコミと怒号が飛び交うヴェローナで、屋台の居酒屋を営み真面目に暮らしているのがロミオだ。“ロミオ”といっても、一般的にイメージされるロミオとはかけ離れている。桐山が演じるロミオは吃音症に悩まされ、奥手で控えめで涙もろい。ふと子犬のような哀愁漂う表情を見せたかと思えば、カラッと眩しい笑顔を覗かせる。ジュリエットと恋に落ちてからは、不器用ながらもまっすぐに彼女を愛し、荒んだ世界で懸命に生き抜こうとする様を体当たりの演技で魅せてくれた。

 

ロミオをはじめとするモンタギューの一味は、ティボルトたちから三国人と呼ばれ差別され、身寄りもない。幼い頃から互いに支え合って生きてきたロミオとベンヴォーリオとマキューシオの3人は、まるで本当の兄弟のようだ。泉澤が演じる、喧嘩っ早くて勝ち気な三男マキューシオ。そんなマキューシオを隣でなだめて面倒をみているのが、浅香演じる長男ベンヴォーリオ。いつも間に挟まれどっちつかずなのが、次男のロミオといったところだろうか。そんな彼らが頼れるのは、街で診療所を営んでいるローレンスくらいだ。渡辺が演じるローレンスはときに厳しく、ときに父親のような温かい眼差しで彼らを見守っていた。

 

今日を生きるだけで精一杯なロミオは、明日への希望が見出せないでいた。浮かない顔のロミオを、マキューシオとベンヴォーリオは強引にダンスホールへと連れ出す。そこで待っていたのは、ジュリエットとの運命的な出会いだった。今までの人生をやり直し、新しい明日を生きようとするジュリエット。彼女のまっすぐな瞳と言葉に胸打たれたロミオは、ジュリエットに明日への希望を見出す。

 
 

 

2人はすぐに惹かれ合うものの、それぞれモンタギューとキャピレットに属する敵同士。「あぁ、ロミオ、あんたは、なんでロミオなん?」。言わずと知れたあの名台詞も、しっかり関西弁に翻訳されている。ただ関西弁なだけではない。ジュリエットへの愛を月に誓うロミオに対し、ジュリエットは「太ったり、痩せたり、体重管理もでけん、だらしない月にちこうたりせんといて」と、遊び心満載の台詞で答える。2人が愛を語り合う場所も、美しい月明かりに照らされたバルコニー・・・・・・ではなく、真っ白なシーツが干されている物干し台というのもシュールな笑いを誘う。

 

お笑い要素たっぷりでコミカルな作品なのかと思いきや、本作は人間の愚かさや戦争の恐ろしさを真正面から描き、観る者に深く問いかけてくる作品でもある。物語の舞台は戦争から5年後。海の向こうではまた新たな戦争が始まっているようだ。ヴェローナの街には、傷痍軍人(朴)が弾くアコーディオンが虚しく響き渡る・・・・・・。

キャピレットのリーダーを務めるティボルトは戦争で左脚を失い、5年経った今でも毎晩悪夢にうなされている。戦場がどれほどの地獄だったか、苦々しく涙ながらに語る高橋の迫真の演技は必見だ。ティボルトが心酔しているキャピレットの若頭、ロベルトを演じる和田はなかなかに癖の強い立ち居振る舞いで、権力の権化として終始存在感を放っていた。
 

 

上演時間は1幕1時間40分、休憩20分、2幕1時間25分の計3時間25分。笑って泣いて、心揺さぶられる熱いドラマに没入しているとあっという間だ。決して他では味わうことができない、ここだけの『ロミオとジュリエット』を体感してほしい。
 

 

 火照った体はオリジナルドリンクでクールダウン 

夏空の下、歌舞伎町を歩いて劇場へ着いたなら、まずは劇場内のバーカウンター「Za Bar」へ直行するのがおすすめ。ここでは様々なドリンクや軽食が用意されており、『泣くロミオと怒るジュリエット2025』公演期間中は、劇場オリジナルドリンク2種類が発売中だ。

グラデーションが美しい「トロピカルルージュ」は、ヨーグルトベースのドリンク。マンゴー、ザクロ、ココナッツのシロップが絶妙なバランスで絡み合い、優しい甘さが体に染み渡る。よく振って混ぜてから飲んでほしい。

涼し気なブルーが映える「アイスブルー」は、レモンネードをベースにした爽やかなドリンク。ドリンクに浮かぶレモンシャーベットのシャリシャリとした食感を楽しみつつ、火照った体を中から冷ますことができる。

さらに、ドリンクを購入すると劇場オリジナルボトルホルダーがついてくる。10種類のカラーの中からひとつ、お気に入りのホルダーを選んでほしい。観劇の思い出にもピッタリだ。観劇前と幕間を利用して、劇場空間を余すことなく楽しんでみてはいかがだろうか。

 

Bunkamura Production 2025
『泣くロミオと怒るジュリエット2025』

2025年7月6日(日)〜7月28日(月)
お問合せ:Bunkamura 03-3477-3244 (10:00~18:00)

公演詳細はこちら

 

文・写真:松村 蘭 (らんねえ)

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